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2005年10月23日 [バルジの戦い]

「バルジの戦い」をプレオーダーでご注文いただいた方から、何通もの
メールをいただきました。とりあえず到着のご連絡とコンポーネントや
本誌記事への好意的な評価がほとんどでしたが、そのなかで
あるベテランのゲーマーの方から次のような疑問を提示されました。

「ルールを読んだところ、Fire & Movement誌第20号に掲載されていた
正誤表がほとんど反映していませんが、何か理由があるのですか?」

はい、この「正誤表」は、製作作業中に参照しており、一部(連合軍の
移動制限)は日本版改訂ルールの参考にしましたが、その他の部分は
ルールには反映させませんでした。理由は、そこに提示されている項目
が、「正誤表」と呼ぶには完成度が低すぎるように思われたからです。

発表されている「正誤表」を反映させないなんて、と疑問に思われる方も
おられるでしょうが、私は発行人としてこの決断に自信を持っています。
もし、この「正誤表」をすべて無条件にルールに適用していたなら、
ゲームのルールは矛盾に満ちた、混乱したものになったと思うからです。

Fire & Movement誌第20号の「正誤表」は、ウェブ・グロニャールという
アメリカのウォーゲーム関連のデータベース・サイトで閲覧できますので
http://grognard.com/errata/darkdec.txt
興味のある方には実際にご確認いただきたいのですが、一読されて
わかる通り、箇条書きに列記された各項目は全く整合性が取れていない
どころか、完全に矛盾する部分が少なからず存在します。例えば、
戦略移動の項目を見ると「Units in strategic movement may not end
their turn adjacent to another friendly unit also in strategic
movement(戦略移動隊形のユニットは、他の戦略移動隊形の味方
ユニットに隣接するヘクスで、戦略移動を終えることができない)」とあり
ますが、後の項目では「Units in Strategic Movenent may enter enemy
zones of control and attack at the owning player's discretion(戦略
移動隊形のユニットは、敵ZOCに移動して入ったり、その敵ユニットを
攻撃したりすることができる)」となっています。最初の項目が、縦列
状態での道路スペースの占有を表しているとしたら、なぜ「敵との接触」
にはその制限が適用されないのか、理解に苦しむところです(一応、
攻撃は半分の攻撃力で、という制限はありますが、その程度のペナル
ティで済むのなら味方と隣接したヘクスでの移動終了も可能なはずです)。

また、さらに理解に苦しむのが、いくつかの項目に記されている「This
rule is not recommended to be used(このルールの使用はお奨めしま
せん)」というコメントです。お奨めしないようなルールを、どうして正誤表
という形で発表するのか、私にはどう考えても理由がわかりません。
もちろん、お奨めされない改訂案を、日本版に反映すべき理由もない
わけですから、この「アドバイス」通り、採用は見送らせていただきました。

さらに言えば、ここに記されている個々の項目には、それを適用した場合
の波及効果についての説明がほとんど示されていません。例えば、
「防御ヘクスに隣接するヘクスに、防御側の味方の戦車または工兵ユ
ニットが存在すれば、攻撃側の装甲効果を打ち消すことができる」という
項目があり、一見するとなるほどと思えるのですが、ではその戦車/
工兵ユニットと防御ヘクスの間に川ヘクスサイドがある場合はどうなのか、
その戦車/工兵ユニットが同一の戦闘フェイズ中に別の攻撃側ユニット
から攻撃を受けた場合はこの能力に影響するのか、その戦車/工兵
ユニットが陣地構築や架橋を行っている場合にその作業を中止して
この支援を行うことはできるのか、その戦車/工兵ユニットは1回の
敵戦闘フェイズ中に何回でもそのような能力を発揮できるのか、などなど
きちんとプレイテストした上で採用を決めたのであれば、当然言及されて
いるはずの「波及効果のフォロー」が、全く見受けられないのです。

上に挙げたような、全体的な「作りの甘さ」から判断して、私はこれらの
「正誤表」がプロフェッショナルなプレイテストを経て作られたものではなく、
単なる思い付きのアイデアを箇条書きにしただけの「アイデア段階」で
あると考え、これをそのままオリジナル版に適用することは危険だと
判断したので、日本版への反映は見送りました。実際、航空攻撃に
おける損害の大きさ(歩兵以外なら1/3で1ステップロス)は、デザイナー
ズ・ノートでパーカー氏が書かれている「損害の出にくい理由」と完全に
相反するもので、わずか1日で1個連隊が航空攻撃で全滅するという
展開は、オリジナル版のデザイン・コンセプトとは相容れないものです。

本来、ゲームの正誤表というのは、特定のルール項目を差し替えること
で、他に支障が生じない仕様に仕上がっていなくてはなりません。
言い換えれば、一部分の変更案のみ提示し、それによって生じる
他のルール(機械で言うと他の部品)との摩擦や衝突を回避する手立て
が用意されていないような「正誤表」は、正誤表として機能し得ないと
私は理解しています。このFire & Movement誌第20号の「正誤表」が
パーカー氏の手によるものでないことはほぼ確実だと思いますが、
同誌に掲載される「正誤表」にはメーカーサイドによる公式な正誤表と
第三者が(勝手に、かどうかはわかりませんが)作成した「変更案」の
2種類があるようなので、適用には細心の注意を払う必要があります。

ちなみに、ウェブ・グロニャールには、もう1つ別の「正誤表」も存在して
いますが(http://grognard.com/errata1/darkdec.txt)、こちらの方も
内容を検討した結果、反映は見送りました。「二次攻撃の追加ステップ
ロスは、各攻撃ヘクスではなく、攻撃側全体から1ステップロスでよい」
というルールは、導入すれば二次攻撃をやりやすくなる反面、そのため
だけに不必要な歩兵を投入するという「ゲーム的」なテクニックが多用
される結果になると思われ、オリジナル版の持つ「明快なコンセプト」
が失われてしまうと判断されたためです。今回に限らず、シックス・アン
グルズの復刻シリーズは、オリジナル版のデザイン・コンセプトに敬意を
表し、その「オリジナル版の良さ」を最大限引き出す方向で補足する
という方針ですべての作業を行っていますので、出所のよくわからない、
オリジナル版のデザイン・コンセプトを壊してしまう可能性を帯びたような
「正誤表」を無批判・無検証で反映させることはしないつもりです。

もちろん、ユーザーの皆さんがこれらの「正誤表」をゲームに取り入れて
プレイされることはご自由ですので、それを止めることはしません。
ただし、その場合は対戦させる前に、上に挙げたものを含め、「正誤表」
でフォローされていない細々とした「明確化の確認作業」をプレイ前に
相手プレイヤーの方としておかれることを強くお奨めしておきます。


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