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2008年8月12日 [激闘ノルマンディ]

シックス・アングルズ第11号「モスクワ攻防戦」本誌製作の進捗状況の報告です。巻頭10ページのヒストリカル・ノートは、戦況図を含めてほぼ完成し、最後の「マザーランド改造計画」第1回の仕上げ作業を進めているところです。予定通りに16日に本誌の最終データを発送し、印刷所のお盆休みが明ける18日から印刷に取りかかってもらいますので、来週前半には最終的な「プレオーダー発送日」と「店頭発売日」を確定してお知らせできると思います。

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モスクワ戦況図01.jpg

それから、前回のコメント欄で、「激闘ノルマンディ」のスタック制限に関する話題が出ていましたので、改めて日本版発行人の認識を明確化しておこうと思います。日本版発行人は、1プレイヤーとして、このゲームをたいへん気に入っており、西部戦線をテーマにしたゲームの中では傑作の部類に属すると考えていますが(その理由はあとで述べます)、その「お気に入りゲーム」が、ゲーム本体の完成度や再現性の高さ、プレイの醍醐味や作戦の研究といった話題ではなく、ルールの文法的解釈にまつわる「神学論争」のような文脈でばかり語られるのは、日本版発行人として、1ゲーマーとして、非常に残念に思います。

激闘ノルマンディ」のスタック制限に関する問題については、今年1月16日に公開しました追加の明確化(http://www.mas-yamazaki.net/cobra_errata_2008_01_16.pdf)の中で詳しく述べました通り、日本版発行人は英文ルールの表記や「MOVES」誌掲載の研究記事の内容などから合理的に判断した結論として、「スタック超過に対する罰則ルール」は「意図せずして発生したスタック超過が発覚した場合への対処法」であって、最初から「プレイヤーが意図的にスタック超過という状況を発生させることを容認するルール」ではない可能性が高いと理解しています。とはいえ、「スタック超過に対する罰則」がルール本文に存在する根拠については、上に挙げた二通りの解釈が存在しますが、今のところどちらか一方のみが正当な根拠であると断定できる決定的な材料は見つかっておらず、このルールの存在だけを基に最終的な判断を下すことは、あまり論理的であるとは言えません。

もちろん、このような問題に対して、最終的な決定を下す権限を持っているのは、ゲームのオリジナル版のデザイナーだけであり、日本版発行人に許された最大限の権限は「日本版発行人はこれこれの根拠に基づいて、次のような結論を下しましたが、それを受け入れるかどうかはご自由です、皆さんのご判断の参考にしてください」という程度の「勧告」になります。ただし、英文ルールに基づいた日本版発行人の判断(「両プレイヤーとも、いかなる移動フェイズ終了時にも、そして戦闘フェイズの期間中は常に、1ヘクスに1個師団を超えるユニットを置くことはできない」という定義の明確な禁止ルールが存在すること)とは別に、ゲームデザイナーが何を意図したのかという内在的問題や、戦史シミュレーションとしてのテーマとなった戦いの再現性等を考えると、やはりどのような角度から検証しても、意図的なスタック超過はルール違反としてプレイするのがよいかと考えます。

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戦史に詳しい方ならご存知のとおり、1944年7月から8月のノルマンディ地方の戦いでは、連合軍の戦闘爆撃機(ヤーボ)がドイツ軍地上部隊の行動妨害に猛威を振るい、第二次世界大戦の序盤から中盤にかけて無敵の強さを誇ったドイツ軍装甲部隊が、「スピード」という最大の武器を奪われて、戦略的な劣勢に立たされることとなりました。言い換えれば、ノルマンディ攻防戦における重要な「主役」の一つが、サンダーボルトやタイフーンなどの「ヤーボ」であり、プレイヤーがこの「ヤーボの威力・恐怖」を体感できるゲームこそが、出来の良いノルマンディ戦ゲームと言えるのではないかと思います。

このような視点から「激闘ノルマンディCOBRA)」を見ると、非常に上手い方法でヤーボの威力を処理していることがわかります。「晴天」「荒天」「嵐」という三種類の天候に応じてドイツ軍部隊の移動力が大きく変化し、ヤーボが自由に大空を飛びまわって地上の獲物に目を光らせられる「晴天」ターンには、歩兵部隊は前線からの離脱すら行えず、車輌部隊も道路脇の森に隠れたり、夜の間だけ移動するというような「逃げ隠れしながらの移動」を強いられるため、武器としての「スピード」の威力を完全に封殺されることになります。逆に言えば、天候が「嵐」だとドイツ軍は歩兵も含めてほぼ自由に動き回れる(戦線からの離脱も行える)ので、551蓬莱のCM(と言っても大阪圏以外の方には意味不明かもしれませんが)のように「ヤーボがある時、ない時」の劇的な対比を、プレイヤーは実感することができます。

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こうしたルールは、当然のことながら、ドイツ軍プレイヤーに強い不満とストレスを感じさせますが、私はこれこそが「ノルマンディ戦でドイツ軍の指揮官が体感した不満とストレス」であり、おそらくはデザイナーがゲームを通じてプレイヤーに伝えたかったことなのではないか、と考えています。私がこのゲームを気に入ってる理由の1つが、こういった「パットン第3軍による大突破が発生するまでのジリジリした持久戦」を簡潔なルールで再現できていることであり、大突破を境に劇的な「転調」を見せるというゲーム展開面での見事な「演出」は、デザイナーおよびオリジナル版製作スタッフの卓越した才能以外の何物でもないと敬服しています。

もし、意図的なスタック超過の「戦法」を容認するなら、こうしたドイツ軍プレイヤーの「不満とストレス」は大きく軽減され、ドイツ軍はより「気持ちよく」ゲームをプレイできるかもしれません。とはいえ、ドイツ軍装甲部隊が天候に関係なく、自由自在に合理的な行動を行えるゲームというのは、テーマの再現性を考慮しない純粋な対戦ゲームとしてはおもしろいかもしれませんが、私が考える「当時のノルマンディの戦い」とはだいぶ違うような気がします。

もっとも、この点に関しては、前回記事のコメントにありました「閾値」の問題であり、私の判断だけが正しいなどと言うつもりはありませんので、プレイヤーの方が最も合理的であると考えられる形で、ゲームをプレイしていただければ幸いです。

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それから、2008年2月23日の記事で少し触れました、ドイツ軍の「勝利条件の不備を突いた裏技」を封じる方策についてですが、連合軍は地図西端からだけでなく、地図東端からも部隊を突破させられるようにし、機甲師団は1個師団につき6VP、歩兵師団は1個師団につき4VPを獲得できるようにすれば、多少は「裏技の抑止力」として機能するのではないかと考えています。ノルマンディ戦におけるドイツ軍の戦略目標は、セーヌ川方面への連合軍の進出を可能な限り食い止める(遅らせる)ことなので、地図東端の死守というドイツ軍プレイヤーの「課題」は、当時のドイツ軍の軍事指導者に与えられた任務とも一致すると思います。ただし、これに関しては時間的な理由から、いまだ検証プレイを行っていないので、あくまで日本版選択ルールの「試案」という形で適用していただければと思います。

既に完売したゲームに関して、あれこれと記事を書くのは少し心苦しい部分もありますが、「激闘ノルマンディ」をお持ちの方は、ぜひこのゲームを楽しんでください。

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エーベルバハ

激闘ノルマンディを大変気に入っている者です。私は今まで一度もスタック制限をわざと破るようなプレーはしていませんが、ドイツ軍は考えることが多くて脳みそを酷使する楽しさをたっぷりと味わえます。ウエストウォールも期待しています。

ところで、ルールにエラッタがたくさんありましたが、それらを全て反映した完全版ルールをネットで公開していただけないでしょうか。ルール確認の際にまず本誌のルールを確認して別紙のエラッタをさらにチェックするのは大変なので。
by エーベルバハ (2008-08-13 22:26) 

Mas-Yamazaki

エーベルバハさま: コメントありがとうございます。海外翻訳物のゲームに関しては、私が版権所有者から譲渡されているのは「日本での翻訳商品の製造販売権(いわゆるライセンス)」であり、本当の意味で「版権を取得した」わけではない(これは他の日本のメーカーも同じはず)ので、翻訳したルールを無料配布する権利というのは、ここには含まれていない可能性があります。

ただし、今回の場合は日本版発行人の不手際による「翻訳ミス」が多々あり、それを訂正する「大きなエラッタ」という名目で、「激闘ノルマンディ」の完全版ルールブックのPDF形式での無料配布を行う方向で考えたいと思います。日本版の「激闘ノルマンディ」が既に完売していて、増刷の予定もないこと、アメリカでデシジョン・ゲームズが出版した「COBRA(新版)」はゲーム内容に多少の手が加わっているという周辺の状況から考えて、大きな問題になることはないと思います。

このゲームに関しては、プレイヤーの方々に多大なご迷惑をおかけしたことを改めて深くお詫びいたします。完全版ルールの公開は、できれば来週中にはなんとかしたいと思いますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。
by Mas-Yamazaki (2008-08-16 16:45) 

エーベルバハ

すばやい対応ありがとうございます。これで、ゲームをプレイしやすくなり助かります。「モスクワ攻防戦」も楽しみにしています。
by エーベルバハ (2008-08-20 00:30) 

通りすがり

戦闘結果表の「攻撃側が先に適用」という所が直ってないようですね。
by 通りすがり (2008-08-25 17:12) 

Mas-Yamazaki

エーベルバハさま、通りすがりさま: コメントありがとうございます。チャートの訂正は、うっかりして1つ漏れていました。さっそく新しいデータと差し替えておきましたので、ご活用いただければと思います。今後も、何かお気づきの点などがありましたら、ご教示いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
by Mas-Yamazaki (2008-08-27 00:12) 

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