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2008年10月24日 [モスクワ攻防戦]

つい先日、アマゾンで本を検索していたところ、私が「モスクワ攻防戦」の制作とヒストリカル・ノート執筆で参考にした文献の一つである、Rodric Braithwaite著「MOSCOW 1941」の邦訳が、今年の8月に刊行されていたことがわかり、さっそく購入してみました。右が原著、左が邦訳です。

moscow1941.JPG
ロドリク・ブレースウェート著 川上洸訳
「モスクワ攻防 1941: 戦時下の都市と住民」
白水社 2008年8月15日発行 本文548ページ 本体3600円+税

著者は1932年生まれのイギリス人(従って当時の空気には触れていない)ですが、冷戦末期には駐ソ大使を経験したこともある、ソ連(ロシア)事情に精通した人物で、モスクワ攻防戦期のソ連側の市民生活や軍人の動きを、非常にきめ細かな筆致で丁寧に描き出しています。1941年10月のモスクワ市内での軍民のパニックをはじめ、市民や兵士の心理が動揺している様子も生々しく(しかし簡潔な文体で)描かれており(ソ連末期に公開された多数の史料・文献資料や多数の聞き取り調査に基づく)、当時のソ連側の雰囲気を知ることのできる貴重な一冊です。また、元軍情報部の一員という著者の経歴による強みか、軍事関係の記述も非常に興味深く、ジューコフが戦時中に女性軍医を愛人として囲っていたこと、そんな自分の行状を棚に上げて「カトゥコフは女にうつつを抜かして軍務をおろそかにしてけしからん」などと批判していたことなど、ソ連軍人の「人間的な側面」がイデオロギー的偏見抜きに述べられているのも、本書の優れている点でしょうか。価格は(おそらく一般の方には)少し高めですが、シックス・アングルズ第11号「モスクワ攻防戦」に続いて、コマンドマガジン日本版でも12月(第84号)と来年2月(第85号)に連続してモスクワ戦の作戦級ゲームが発売される予定ですし、この秋から冬は本書を傍らに置いて、モスクワ戦という大テーマにどっぷり浸ってみるというのも一興かと思います。

私の方も、今週末は連日、頭から足の先まで「モスクワ漬け」になりそうです。土曜は石田さんと「モスクワ攻防戦」冬季反攻シナリオの集中テスト、日曜は朝から国際通信社さんにお邪魔して、中黒さん・鹿内さんとコマンド誌記事用の「モスクワ戦ゲーム」談義を展開する予定です。私が同社を離れたのは1998年(コマンド誌の号数で言うと第22号が最後)なので、ちょうど10年ぶりに国際さんの敷居をまたぐことになりますが、昔大変お世話になったご両人とひさしぶりにお会いできるということで、どんな話題で盛り上がるのかと、今から楽しみです。

ちなみに、今日は対談の予習として、中黒さんデザインの「モスクワ’41」(テスト版)を1人でプレイしていますが、第83号の堀場さんの記事にある「ゲームデザイナーとは監督であり、脚本家であり、演出家でもある」という言葉を、一般ユーザーの方とは少し違った視点から楽しんでいます。自分がデザイン作業でどう処理しようかと悩んだ要素や、泣く泣く割愛した要素(それが何なのかは、対談記事で明らかになると思います)が、鮮やかな手法でシンプルにシステム化されているのを見ると、少し悔しい感情もある反面、新たな創作意欲の刺激にもなります。要点を絞り込んだ(そして純作戦的自由度の高い)、非常にテンポのよいゲームで、発売されたら新たなスタンダードになるのではないでしょうか。
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コメント 4

ハナザー

「モスクワ攻防戦」もなかなかよい作品でしたが、その山崎さんが高い評価をされている中黒モスクワ期待大ですね~ヽ(´ー`)ノ♪
by ハナザー (2008-10-24 17:49) 

佐藤(Pum)

山崎さん、こんにちは。たまたま私も昨日、横浜の書店をウロウロしていたところ同書に気が付き手にとりました。ソ連側の話が事細かく綴ってあり、なかなか興味深い本でしたが、わざわざ買うことまではしませんでした。しかし、山崎さんのお話をうかがうところ、また興味が出てきました。また本屋でもう一度手に取ってみようと思います。
by 佐藤(Pum) (2008-10-24 22:54) 

作戦級の僕

10月から年明け1月と季節もぴったり合うので「モスクワ祭り」は良い企画ですね~。モスクワの本はこんど都心に出た時にさがしてみます。(地方の本屋にはまず置いてません)
by 作戦級の僕 (2008-10-25 21:05) 

Mas-Yamazaki

ハナザーさま、佐藤さま、作戦級の僕さま: コメントありがとうございます。

中黒さんのモスクワ戦ゲームは、まだ発売前なので内容についてはあまり具体的に書くことができませんが、同氏の他のデザインと同様、史実の具体的な展開に不必要に囚われることなく、モスクワ戦役全体を支配した「戦いの要点」を押さえつつ、作戦や戦略に関するプレイヤーの「創造力」を最大限に引き出すような仕上がりになっていると思います。

ブレースウェートの本は、安くはないのでとりあえず現物を書店で確認されて購入を検討されるのがよいかと思いますが、東部戦線に興味のある方なら、まず退屈することのない濃い内容だと思います。同じ出版社の「赤軍記者グロースマン」は、やや「マニア向き」の内容でしたが(ヴァシリー・グロースマンという名前を知っている人はマニアです)、こちらも機会があれば書店で手にとってみられることをお薦めします。
by Mas-Yamazaki (2008-10-26 00:17) 

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