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2011年5月14日 [その他(テレビ番組紹介)]

今週はひさしぶりに静かな一週間でした。レトロスペクティブ第7弾『ウエストウォール』の最終校正も無事に終了し、あとは19日に商品が届くのを待つばかり。今回の表紙は、ネットではだいぶ前から公開していますが、原寸で見るとかなりインパクトあると思います。ご注文くださった方々は、ぜひご期待ください。

さて、前回の記事を書いた後、テレビ番組を2本、続けて観ました。だいぶ間が空いてしまいましたが、今回はその番組について少し書きます。

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(画像はNHK公式ホームページより)

一本目は、午後9時からNHK-BSプレミアムで放送されていた『知られざる在外秘宝(1) 北斎漂流 謎のイスラエル・コレクション』。葛飾北斎の膨大な浮世絵コレクションが、なぜかイスラエルに存在する、ということで、ナチスに迫害されたヨーロッパのユダヤ人が、パレスチナに逃れた時に持ち出したのか、と思いましたが、実際はもう少し複雑なストーリーでした。

持ち出したのがユダヤ人の画商(ドイツ人)、というのは当たっていましたが、ヒトラーが政権をとった直後の国会放火事件で反ユダヤ主義がドイツに広まったのをきっかけに、この画商はコレクションと共にオランダへ亡命し、そこで終戦まで潜伏することに成功します。そして、戦後にイスラエルが建国した際、自分の死後に貴重なコレクションが、日本美術の評価が低下したヨーロッパで散逸するのを心配した彼は、それらを新生ユダヤ国家のイスラエルに寄贈することを決意しました。

このユダヤ人画商ティコティンが、初めて北斎の浮世絵を含む日本美術に触れたのは、第一次大戦当時のことで、場所は当時まだ独立を回復していなかったポーランドだったとか。プロイセン・ロシア・オーストリア=ハンガリーの三国に分割されていたポーランド人の中には、極東の日本が独自の文化を花開かせていることに勇気づけられ、独立回復を目指す精神的な支えと考えた人もいたそうです。それでティコティンも、若い国であるイスラエルの人々に、この絵を見せようとした、との話でした。

以前の記事でご紹介した、映画監督のアンジェイ・ワイダ監督も、第二次大戦中にドイツ占領下のポーランドで北斎の浮世絵を見て、大きな衝撃を受けたそうです。北斎とワイダ監督というのは、意外な組み合わせですが、美術品の流浪と戦争というのは、前々からずっと関心があって資料文献を集めているテーマで、いつか私なりに具体的な形にできればと考えています。

ピクチャ 3.png


もう一本は、同じチャンネルで続きにやっていた、コンスタンティノス・コスタ=ガヴラス監督の映画『ミッシング』。妻と『北斎漂流』の感想を述べ合っていると、勝手に始まっていて、最初は観る予定はなかったのですが、冒頭で「監督:コスタ=ガヴラス」と出たので、また重たい社会派ドラマだろうと思って、そのまま観続けることにしました。

この監督の名前は、中学生の頃に『』という作品をテレビで観てショックを受けたことがあったので、記憶していました(今思えば、当時から「そっち系」に深い関心のある子供だったのかも)。『』は、ギリシャでの右派勢力による民主派大統領候補の暗殺がテーマで、『ミッシング』は南米チリでの右派勢力によるクーデターと、その発生時に現地で行方不明になったアメリカ人の捜索が筋書きの中心に置かれています。

どちらも実際に起きた事件を題材にしていて、描かれている世界での主人公(前者は大統領候補、後者は好奇心旺盛なアメリカ人の若者)の身に起こったことを知るため、家族や友人が聞き込みを重ねていく展開となります。食い違う証言に合わせて、同じ情景で異なる映像を何パターンも見せるという、この二本の映画でコスタ=ガヴラス監督が多用する手法は、独特の緊迫感に満ちていて、真相を知りたいという気持ちと、真実を知るのが怖いという家族の葛藤が非常にリアルに描かれていたと思います。

映画のテーマ選択だけを見れば、この監督は左翼的な思考の持ち主なのかな、と思いそうになります。しかし、実際には両作品とも、それほど単純な価値判断基準で一方を断罪するつくりにはなっておらず、『ミッシング』の最後で駐サンチャゴ(チリの首都)のアメリカ大使が、映画の主人公(若者の父親)に言い放つ言葉は、この日本を含めた現代の「先進国」に共通する、国際政治上の矛盾についての、鋭い警告になっています。

ベトナムやラオス、そしてチリなど、1970年代には多くの血が流れた国々も、私が訪れた21世紀にはそんな痕跡など人々の接し方からは感じられない、とても穏やかな国になっています。自分は恵まれた時代に、恵まれた国に生まれたなぁ、と、今までずっと思ってきましたが、今後もそうであってほしいと切に願わずにはいられません。
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