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2011年8月7日 [東方への突撃]

今日は、石田さんと自宅でシックス・アングルズ別冊第8号『東方への突撃』のプレイテストでした。ルール不明点の洗い出しと対処法の検討、コンポーネントの改善点模索、そしてゲームシステムの内容検証などが主題でしたが、初年度(1941年)を計4回繰り返しプレイし、対戦の内容自体もかなり楽しむことができました。

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このゲームは、独ソ戦(東部戦線)の全体をカバーする戦略級あるいはキャンペーン級のゲームで、1941年6月から1945年5月までの計48ターンでプレイするフルキャンペーンに加えて、1942年5月(青作戦の序幕)、1942年11月(スターリングラード大反攻)、1943年7月(クルスクの戦い)、1944年6月(バグラチオン作戦)の各ショートシナリオが用意されています。

また、使用するマップは共通ですが、ルールは基本ゲームと上級ゲームの2つに分かれており、使用するユニットも基本と上級では数値などが違うものを使用します(マーカーはほぼ同じですが)。上級ゲームは、基本ゲームのシステムをベースに、ユニットの裏と表で異なるモード(ソ連軍の「軍」ユニットの場合、裏返すと「要塞化モード」となって戦闘力が2加算される反面、移動力はゼロになる)や、重砲支援などの追加ルール/マーカーが追加され、ゲームの展開がより多様化します。

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1回のゲームターンは、天候判定フェイズ(大抵のターンは天候があらかじめ決まっているので使わない)と枢軸軍・ソ連軍の各プレイヤーターンから成り、各プレイヤーターンは補充/増援、移動、回復、戦闘の各フェイズから成ります。このように、手順の流れはシンプルかつオーソドックスですが、システムの随所にこのゲームならではの特徴が散りばめられています。

今日のプレイテストで、石田さんと私が特に「面白い」と確認できたのは、戦闘結果表の内容でした。結果の種類自体は、DE(防御側全滅)やEX(相殺)など、比較的一般的なものですが、相殺のバリエーションとして2X(2倍相殺)やDX(防御側全滅の相殺)、TX(全面的相殺)などの条件面が異なる相殺の結果が何種類も用意されており、しかも3対2から4対1程度の「中比率」での戦力比でも6分の1程度の確率で、これらの相殺の結果が発生します。

すると、どんなことが起きるかというと、ドイツ軍が無造作に2対1や3対1の攻撃を行ってしまうと、全く想定外の局面で甚大な損害を被り、気がつくと攻勢の継続すら危ぶまれるような戦力の低下に陥っていたりします。こうした展開は、慎重に情勢を見極めた上で、重要な高比率戦闘に戦力を集中し、副次的な攻撃はなるべく行わずに包囲して対処する(敵プレイヤーターン終了時に補給切れならば即座に除去となる)ことで、ある程度は避けられるのですが、1941年の秋から冬には、どうしても中比率の攻撃を正面で多用しなければモスクワやレニングラードに到達できないので、損害覚悟で突進を行う結果となります。

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拙著『宿命の「バルバロッサ作戦」』でも詳しく書きましたが、ドイツ軍は対ソ侵攻の開始から40日間(1941年6月22日からスモレンスク会戦終了後の7月31日)に、21万3301人の損害を被っており(内訳は戦死者4万6470人、負傷者15万5073人、行方不明者1万1758人)、グデーリアンの第2装甲集団は7月29日の時点で、保有する稼働戦車の台数が開戦時の三割ほどにまで低下していました。言い換えれば、ドイツ軍が連戦連勝であったかのように思われている、バルバロッサ作戦の開始からスモレンスク会戦の終了に至るまでの「戦争序盤の時期」にも、ドイツ軍は決して軽視できない人的・物的な損害を被っていました。

こうした事実にもかかわらず、一般的な独ソ戦ゲーム(私のデザインした『マザーランド』も含む)では、1941年の6月から7月には、ドイツ軍は精神的にかなり楽な気持ちで「気持ちよく」ガンガンと前進できるようになっています。しかし、このゲームでのドイツ軍は、そうした気楽さとは無縁です。ドイツ軍プレイヤーは、最初の数ヶ月間、前戦部隊から寄せられる自軍の損害報告に驚き、毎ターン終了時には、除去されたユニットの数が少ないとホッと溜息をつくような「緊張感」に包まれています。

ある回のテストでは、戦果を焦ったドイツ軍が十分な戦力集中を待たずに(装甲部隊だけで)7月のスモレンスク会戦でソ連軍の大部隊に突入し、第2と第3の2個装甲集団が「相殺」で全滅・除去されるという悲惨な展開となりました。全滅したユニットは、その時点で補給切れ状態でなければ、補充ポイントを用いてゲームに復帰することが可能ですが、初年度のドイツ軍は1ターンにつき1補充ポイントしか得られず、失われた装甲集団は1942年以降にならないとゲームには復帰できません(基本ゲームの装甲集団は戦闘力5で、復帰には5補充ポイントが必要)。

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もちろん、ドイツ軍の損害は大抵の場合、ソ連軍の全滅と引き替えになっているので、地図上のソ連軍もまた危機的な状況の中での「綱渡り」的な用兵を強いられます。そして、最初のクライマックスである「最初の冬」の到来と共に、ドイツ軍プレイヤーは出血覚悟のモスクワ攻勢を実行すべきかどうか、という重大な決断を迫られることになります。

プレイテストを重ねるうち、私と石田さんの脳裏には、シックス・アングルズ別冊第5号『戦略級・日露戦争』のテストで味わったのと同じ種類の「苦難」が、生々しく蘇ってきました。日本海軍の旅順閉塞作戦や、乃木第3軍の旅順要塞攻撃の時も、自軍の損害を覚悟で突撃を繰り返し、サイコロを振るたびに深い溜息を漏らしていました。当時の戦争指導者の心痛も、このようなものであったか、というのは、もちろん主観ではありますが、こうした心理を味わわせてくれるという点だけでも、私にとっての歴史シミュレーション・ゲームは価値のある存在です。

ルー・コートニー氏のデザインした『東方への突撃』は、対戦ゲームとしての面白さを保持しつつ、独ソ戦という巨大なる戦争の「過酷さ」を、軍事作戦面だけでなく心理面でも味わえる好ゲームだと思います。内容の充実を図るため、発売は当初の計画より一か月遅れの10月となる予定ですが、興味のある方はぜひ楽しみにしていてください。

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