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2012年7月17日 [ミッドウェー/日本海海戦]

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本日、学研パブリッシングさんより私の最新刊『侵略か、解放か? 世界は「太平洋戦争」とどう向き合ったか』が発売となりました。一般書店への配本は、店舗により1日から2日後になる予定です。内容については6月22日の記事で少し紹介しています。また、アマゾンのページでも、今回は内容紹介文を多めに盛り込んでいただきました。興味のある方はぜひ、書店の店頭で手に取ってご覧いただければ幸いです。

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今月6日に刊行された『歴史群像』誌の売れ行きもかなり良いとのことで、付録ゲーム2点と本誌記事1本を担当させていただいた者として嬉しく思っています。付録ゲームについては、過去にウォーゲームやシミュレーション・ゲームをプレイされていた(けれどもずいぶん前に離れてしまった)という方や、こういうゲームそのものに初めて接する方からも「面白い」という反響をいただき、今までのゲームデザイン経験とは違う種類の感慨にひたっているところです。

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上はアマゾンの「雑誌ベストセラー」ランキング、7月7日17時54分の状況。この時点で、あらゆる雑誌の中で43位。女性ファッション誌をはじめメジャーな雑誌は桁違いの部数を発行していますが、その中で善戦と言えるのでは。

国際通信社さんより来月発売予定の『コマンド・マガジン』第106号において、『歴史群像』誌の付録ゲーム「ミッドウェー海戦」と「日本海海戦」に関する話題を中心とした私のインタビュー記事が掲載される予定で、今日そのゲラのチェックをしました。今回は、その記事の内容と重ならない範囲で、付録ゲーム2点についてのデザイナーズ・ノート的な話を少し書いてみようと思います。

ゲーム2点の企画案が固まり、デザイン作業をスタートした時点で、私がまず心がけたのは「既存のウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲームの枠組みをいったん全部捨てて考える」ことでした。私がゲームを始めた頃のワクワクした感情を思い返してみると、興味をかき立てられたのは「ウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲーム」という「カテゴリー」ではなく、目の前にある個別のゲーム群でした。

当時の記憶をひもといた時、私がまず思い出すのは「アバロンヒルゲーム」という言葉です。ウォーゲームでもシミュレーションゲームでもなく「アバロンヒルゲーム」。中学生になるまで、いろんなゲームを楽しんできた私にとって、この「アバロンヒル」のゲーム群は、それまで自分の知っていたどのゲームとも違っている一方で、ずっと「こういうゲームがあったらいいな」と思っていた内容を備えており、私は夢中になって遊びました。

今回、『歴史群像』誌に「ミッドウェー海戦」と「日本海海戦」のゲームが付くとの情報を耳にされた既存のウォーゲーマーあるいはシミュレーション・ゲーマーの方は、おそらく「ミッドウェー海戦と日本海海戦のウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲーム」を私がデザインしたと理解されたのだと思います。しかし、私は今回のデザイン作業において、既に「固定観念」や「既成概念」、「先入観」として出来上がってしまっている「ウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲーム的なアプローチ」は、敢えて捨てるのが最善の道だと考えました。

一般に「シミュレーション・ゲーム」といえば、ヘクスのマップ、ユニット、ターン、スタック、といった「お約束の要素」で構成され、既にその世界に馴染んでいる人には「居心地のいい世界」ですが、それが外部から見てどう映っているか、と考えた時、必ずしもポジティブな要素だけとは言えないように思われます。それゆえ、今回のデザインでは敢えてこれらの用語や概念を「使わない」と決め、『歴史群像』という雑誌の読者層を占める幅広い人が、初めて目にしても楽しめる「ボードゲーム」になるよう、ルールの構築を進めていきました。

もちろん、実際にプレイされた方はおわかりの通り、サイコロを振って判定表を参照したり、チットを引いて何かを判定する、という「手法」は、シミュレーション・ゲームの世界でも広く使われているテクニックです。従って、「ウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲーム的なアプローチ」が完全に排除されたかといえば、システム的側面から見れば、そうではないとも言えるでしょう。

ただし、ベテランのウォーゲーマーあるいはシミュレーション・ゲーマーの方が、この2つの付録ゲームをシステム的側面からのみ分析し、既存の類似テーマのウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲームとの比較で論じたり、優劣をつけるような思考をされているとしたら、それは「非常にもったいないこと」だと思います。そういう「固定観念」や「既成概念」、「先入観」によって、逆に見えなくなってしまう点が確かに存在すると思うからです。というよりも、そこで「見えなくなってしまう点」こそ、私がこのゲームのデザインで目指した目標である可能性が高いように思います。

私がこのゲームを始めた頃は、模型雑誌『ホビージャパン』誌に掲載される「アバロンヒルゲーム」の広告を眺めているだけで、時間が過ぎるのを忘れるほどでしたが、例えば初期のアバロンヒル社のゲーム(下の例は“D-Day”)を見ると、箱に次のような謳い文句が記されているのを確認できます。

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“Now YOU Change World War II History in this realistic tournament GAME by Avalon Hill”
(今、君はこのゲームで第二次世界大戦の歴史を変えることができる)
※画像はBoardGameGeekより転載

この部分については「今、君はどこそこの戦場で何々軍の軍勢を指揮し…」などいくつかのバージョンありますが、当時の私にとって何より魅力的だったのは、システムが何と同じだとかいう「形式」や「手法」ではなく、ダイナミックなゲーム展開を通じて「指揮官による決断の醍醐味」をプレイヤーに味わわせるという、ゲーム制作のコンセプトそのものでした。それと同じことを、今回の『歴史群像』誌付録「ミッドウェー海戦」および「日本海海戦」で行おうと考えたわけです。「今(Now)、君(You)はミッドウェー海戦あるいは日本海海戦の戦場で艦橋に立ち、部下は君の決断を待っているぞ」と。

この2つのゲームが入っているパッケージに、なぜウォーゲームでもシミュレーション・ゲームでもなく「ボードゲーム」という文字が入っているのか、これで少しおわかりいただけたかと思います。ふつうのボードゲームから、ある目的のために進化・特化したものが「ウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲーム」だとするなら、いったん最初の出発点(原点)まで引き返した上で、現在の私が見て最も適当と思われる手法を用いて、ウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲームとは違う「ボードゲーム」をデザインしました。

前記した「今回の目的地」に至るまでのルートは、部分的には既存の「ウォーゲームあるいはシミュレーション・ゲーム」と重なってはいますが、あくまで「そう見えるだけ」であって、目的地はまったく異なっており、ルート自体も新たに設定し直した道を進んでいます。

この道を進んだ結果、きちんと最初に意図した通りに「今回の目的地」に到達できるのか。それは発売からわずか10日ほどしか経過していない今の時点ではわかりませんが、ぜひベテランのウォーゲーマーあるいはシミュレーション・ゲーマーの方にも、見かけ上のシステムの類似等から連想される「固定観念」や「既成概念」、「先入観」をいったん捨てていただき、フラットな気持ちでこの2つの「ボードゲーム」を遊んでいただければ、と思います。

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コメント 4

オールドソルジャー

ブームの頃からのウォーゲーマーです。今回のエントリを拝読、ブームが衰退に向かった理由がよくわかったように思いました。再現性の向上のつもりでマップ上の辻褄合わせを重視する路線へ、ユーザーもメーカーも無自覚に向かった結果、ここで書かれているような一番大事な魅力が忘れ去られたのではないでしょうか。
by オールドソルジャー (2012-07-18 18:06) 

きむ

こんにちは。
歴史群像、購入しました。
次の週末にプレイしようかな、と思っております。
今後も同様な企画があるのでしたら、奉天会戦テーマを希望します
(ミッドウエイや日本海海戦に比べるとマイナーではありますが)
by きむ (2012-07-19 14:33) 

Mas-Yamazaki

オールドソルジャーさま: コメントありがとうございます。ご指摘のように、ユーザーとメーカーの双方が「初心を忘れた」がために生じた弊害というのは、確かに存在したと思います。私自身、地図上における「辻褄合わせ」にも魅力を感じてしまう人間なので、そうした傾向に加担したとも言えるわけですが、私が今回デザインしたような内容のゲームは、発表媒体が何であれ、今後もまた作りたいと考えています。
by Mas-Yamazaki (2012-07-22 16:18) 

Mas-Yamazaki

きむさま: コメントありがとうございます。実は最初の段階で「1人用ゲーム」のテーマを検討した時、日露戦争の乃木第3軍による旅順攻撃戦ゲームというのを候補に入れていました。もちろんプレイヤーは乃木の立場で、ヘクスマップを使わずに屍山血河の要塞攻略を繰り広げるボードゲームです。203高地の早期攻略が「最善手」なのかどうか不明という、当時の第3軍司令部の心境に近づけるため、いくつかの工夫を(アイデア段階ですが)考案していました。奉天会戦も何か良いアプローチを考えてみます。
by Mas-Yamazaki (2012-07-22 16:23) 

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