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2017年4月16日 [その他(戦史研究関係)]

今日は告知です。おとといの4月14日に、新刊『「天皇機関説」事件』(集英社新書)が発売されました。

天皇機関説事件表紙s.jpg

【商品説明】
《「天皇機関説」事件は、この学説を主張する憲法学者の美濃部達吉に対する、天皇を崇拝する退役軍人や右派政治家による攻撃が発端となっている。一九三五年二月に始まり、約半年に渡る「機関説」排撃運動の中で、美濃部に対する政治的な弾圧が行われただけでなく、言論や学問の自由も奪われ、立憲主義が事実上停止した。その結果、「権力の暴走」を止める安全装置が失われ、日本は破局的な戦争へと突き進む。この事件は、社会がどのように「壊れて」いくのかを物語る昭和史の重要な分岐点である。現在の政治・社会状況との類似点に戦慄が走る。》

メインテーマは「機関説排撃」ですが、憲法学説の問題に留まらず、最終的には社会の価値観を一変させた重大な歴史の転機でした。具体的には、天皇機関説の排撃に重なる形で「国体明徴運動」が始まり(これについては学研『戦前回帰』を参照)、個人主義や自由主義などの西欧的な価値観も「日本の国体に合わない」として批判や排撃の標的となりました。

帯に映っているのは、事件発生当時の帝国議会(国会)で使われていた、帝国議会仮議事堂の議場。現在の国会議事堂は、まだ建設中でした。

天皇機関説事件裏表紙s.jpg

蓑田胸喜・菊池武夫など対美濃部達吉という中心的な対立の構図と重なる形で、鈴木喜三郎(政友会)対岡田啓介(首相)、平沼騏一郎(枢密院副議長)対一木喜徳郎(枢密院議長)等の別の対立軸も存在し、ここに軍部と在郷軍人、右翼団体の思惑が加わり、文部省も関与して「国体明徴運動」が加速します。

天皇機関説事件内容.png

【推薦】
作家・半藤一利氏(『日本のいちばん長い日』『昭和史1926-1945』著者)
「これは昭和史の重要な分岐点だ。現在と酷似する状況に慄然とする」

今回、尊敬する半藤一利さんに推薦文をいただき、戦史研究家として大変光栄に思います。天皇機関説事件は、以前なら「昭和史の一コマ」として傍観者的に見られた出来事だと思いますが、社会の抑圧が次第に強まる空気感や、議会の内外で飛び交う「罵倒の言葉の鋭利さ」などは、過去の話ではありません。

天皇機関説事件宣伝用s.jpg

今回は、書店などで使う宣伝用パネルも作っていただきました。文章を少し直したので、最終版とは少し違いますが。

戦後の日本は、言論の自由や思想の自由が保障された社会で、そんな時代に生きられて幸運だと、戦史や紛争史を研究していると数え切れないほど感じてきました。今後も日本が、天皇機関説事件後わずか10年ほどで歴史上最大の破滅に向かった「病気に冒された時代」に回帰することなく、戦後70年の平和的繁栄の土台となった自由主義や個人主義の価値観が守られる社会であってほしいと願っています。


【おまけ】

名張の高地にも、数日前にようやく桜前線が到来しました。雨風で散る前に、しばしお花見を楽しみました。

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